shizuさまより頂き物A <2011.11.28>




そして、伊藤と誠の再会!の世界を描いて下さいました!
親に期待されすぎて苦しかった誠。でも、狂ってたけど最高に愛してくれた伊藤。そんな伊藤が帰ってきて…というところまで考えて頂き感激!
肉体の飢えは心の飢えでもある…と言った誠を書いてくれました!感動!(管理人は、何も考えないで漫画描いてるんです。。。反省...)




『融ける』




この夏、俺は留学先のイギリスから帰って来た。実に三年振りの帰京だった。
俺とて生まれ育った故郷が懐かしくない筈もなく、早速、友人の川田を呼び出した。人恋しくもあったんだ。

「山部! 元気そうだね!?」

「川田も変わりなさそうだな」」

俺たちは自分たちの近況を語りだした。メールの遣り取りがなかった訳じゃない。でも、俺は日本語に飢えていた。何でもいいから話したかったんだ。」

「でも、帰ってきて大丈夫かい?」」

「え?」」

 川田の言いたい事は直ぐに判った。アイツの事だ。もう思い出したくもないあの男。
脳裏に浮かんでくるのは狂気に満ちたあの目。俺の上に圧し掛かってきたあの身の重さ。俺を押し開いたあの忌まわしくも強い力。」

「…あ、あぁ。伊藤ね。まだ入所中だろ? もう気にしてないよ」」

俺はアイツなんか何とも思ってない。ヤツの存在は既に過去の物だ。
そういう振りをする為にあえて話に乗り、名も口に出した。
あんなヤツに負けたくはない。負ける訳にはいかないんだ。俺は纏わりつくその影を振り払わなければならない。

 けれど苦しくて空を見上げる。蒼い。一面に拡がる青天だ。遠くで鳴くのはヒグラシか? 東京の夏は暑い。本当に暑くて、暑くて堪らなくて、息が出来なくなる。

 あぁ、空が遠い・・・。





 夏が行き、秋が訪れ、冬が過ぎて、短い春が来た。俺は川田と共に念願の大学に入った。法学部だった。
と言っても法律に興味があるわけじゃない。
それが当たり前のコースだったから従った。自分の意思なんて何もない。そう、何も。

「俺はこれでいいんだ。不要な事は考えるな」

 自分に言い聞かせながら、深く溜め息を吐く。だるさは隠し切れない。少なくとも俺自身には。

 携帯が鳴っている。相手は弟の友人だった。従兄弟から、ヤツが退所したと教えてやれと言われたそうだ。

「出たのか…」

 だから何なんだと自問してみる。アイツは正常になったんだ。でなきゃ医療少年院も外に出したりしないさ。大丈夫。俺は被害者にはならない。
だって16歳の俺はもう何処にも居ない。来年は二十歳だ。ただの男になったんだよ。こんな俺をヤツも欲しがりはしないだろう。

そう。アイツは二度と俺を腕に抱きはしない。キスもしない。俺の耳元で、愛しているとも囁かない。

ふと、寒いと思った。俺は我が身を抱き締めた。もう誰にも触れられることのない、自分の身体を惜しむように。

また携帯が鳴る。知らない番号だ。俺は躊躇したが結局は出た。

「……やま…べ?」

「!?」

目の前が真っ白になった。思考が停止する。電話の向こうで相手は何か言っている。が、聞こえない。脳が受け付けないんだ。

なのに俺は・・・。

「こんな電話でなに言ってんだ! 聞こえないよ!」

 一方的に捲くし立てる。

「おまえは俺に何をした!? 俺をぼろぼろにしたろ! 連れ去って閉じ込めて好き勝手にオモチャにして弄んで傷め付けて殺そうとした!!」 

 罵倒の言葉が止まらない。この口から次々に放たれていく、言語。それは醜い感情の爆発。あの時の醜悪なおまえ。見るに堪えない俺。醜くて……。

二人ともとても醜くて・・・。

そうか。始めたのは俺だった。復讐。弟の復讐。傷つけられたから仕返しを目論んだ。汚らわしい奴らを一掃しようとして、気付いたら俺も汚辱にまみれていた。俺も醜く穢れていたんだ。

「…もういい」

「やま…べ?」

「もう忘れろ」

「嫌だ! 俺は忘れない!」

「え?」

「俺の事を憎んでくれ! 俺を忘れるな!! 俺を一生憎み続けろ!!」

 何を言っているんだ? コイツは。忘れるな? 憎み続けろ? おまえの言っていい事か? 加害者が何をほざく!? そんな台詞がおまえに許されると思っているのか? 

「逢いたいんだ、山部」

 いきなり請うように言われて、俺は二の句が告げなかった。なんだよ、コイツ。なに、考えているんだよ? 俺は意味が分からなくて伊藤が怖かった。

「なぁ頼む。一度でいいから逢ってくれ! おまえの顔が見たいんだ! おまえを抱き締めたいんだよ!! 愛している、山部! 俺はおまえを愛しているんだ!!」

 何だ。いつもの伊藤じゃないか。

なぁにも変わってない。相変わらず狂った男。自分の勝手な愛情だけを押し付けるエゴイスト。いや。愛ですらない。ただの思い込みだ。

「俺にはおまえが必要なんだ! おまえが居ないと生きていけない! おまえは俺の全てなんだよぉ!!!」

 聞く者によっては哀切な叫びと感じるかもしれない。だが俺は携帯を切った。電源も落とした。その時、俺の頬を流れ落ちたモノは何だったのだろう?





 翌日、キャンパスを歩いていて・・・。

 判っていたよ、待ち伏せぐらいしているって。だっておまえは伊藤椋だもんな。

 左腕を引っ張られて歩く。連れ込まれたのは多分ラブホテル。学校の近くにこんな所にあるとは知らなかったな。

 ベッドに突き倒される。圧し掛かられてキス。俺は拒んだ。

「出せよ」

 キスも交わる前の儀式も要らない。そんなヌルイ行為は必要ない。白々しい愛の言葉も薄ら寒いだけだ。

「どうせ勃ってるよな? 舐めてやるから出せよ」

 今まで無言で、やたらとふてぶてしい態度を貫いてきた伊藤が、ギョッとしたような目で俺を視る。

「俺とヤりたいんだろ? なら、さっさと出せばいい」

伊藤は、先程とは打って変わった体でおずおずと出して来た。当然ながら勃起して、腹に着きそうなぐらい興奮している。
顔を埋めるとヒドイ臭いだ。おまけに前よりもっとデカい。ここもまた成長したわけか。凄いな。それにコレ、何日ぐらい出してないんだ?

「なに溜めてんだよ? 俺とヤるから我慢してたって? 本当にどうしようもないな、おまえって」

 嘲笑を浮かべつつ、舌を這わす。三年ぶりのオトコだ。最後は阿久津の従兄弟だったな。
あの刑事には何度かペニスを貸してもらった。彼の目付きは気に入らなかったが、アレは良かったよ。

「うぐっ!」

 出された。亀頭を咥えている時に射精された。濃くて量が多すぎて、手の付けようがない。俺は精液まみれにされた。口も顔もベトベトだ。臭いがキツくて堪らない。

「山部っ! 山部ぇ!」

 伊藤が俺の衣服を剥いでいく。全裸にしなくても、下半身だけで事足りるだろうに。

 脚が割り開かれる。流石にその時ばかりは顔を背ける。伊藤は俺の後肛を舐め出した。
指も挿入して、慣らそうとする。でもきっと直ぐに止めるだろう。コイツは盛りのついた雄だから。

「あぁ! あぁあああああ!!!」

 でも、まさか一突きにされるなんて。痛い! 痛いよぉ!! 痛…い。

「あぁあぁあぁ!! あん! あぁん! あっあっあぁああ!! あぁはぁあああ!!!」

 けれどもう、声が止まらない。痛いのに。泣いているのに甘ったるい声が響く。俺は泣いているのに何故?

「誠! 誠誠誠ぉ!!」

 男は俺の名を呼びながらラストスパートを掛ける。粘膜を貫き、掻き回す湿った音。汗の匂い。
触れ合う濡れた肌。硬い筋肉で覆われた肉体の重み。俺を攻め抜く、勃ちきった大きなペニス。ホントに巨大だ。

 これが男…か・・・。

 多分、俺は男に成りきれない中途半端な存在なんだろう。だから同性であるコイツに抱かれた。西本ともヤッた。後は何人とシたのか? あまりよく憶えていない。

「誠、誠誠ぉ! 出るよぉお!!」

「ひぃ! ひぃあぁあああ!!!」

 もう何も分からない。俺は伊藤の身体にしがみ付いた。熱い。本当に熱い。燃えるように熱くてこっちが溶けそうだ。融けて無くなる。



「良い! いとう、良いよぉ! イイ、イイよぉおお!!! いとうぅうう!!! イッイぃいいい!!!!」

 消え逝こうとしていた理性の片鱗が、あの刑事の目に浮かんでいた憐憫の色を思い出させた。彼に言う。

 俺を哀れむな・・・。





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